は・ば・ぱ・ひゃ・びゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(125)“ぼーっ”“ぺこり”

二人は木からおりると、かけ足で縁側にもどって行った。菊を見ると、吉川はぼうっと耳まであかくなって、ぺこりと頭を下げた。三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]173より〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は、三浦綾子記念文学館を運営...
や行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(124)“ゆさゆさ”

「ハーイ」信夫は答えて、いちょうの枝をゆさゆさとゆすった。菊の白い顔がこちらを向いて笑った。三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]165より〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は、三浦綾子記念文学館を運営する「公益財団法人三浦綾子...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(123)“すらり”

菊の呼ぶ声がした。澄んだ声である。いちょうの木の上に登っている信夫と吉川修には、縁側に立っている菊のすらりとした姿が見える。菊は方角ちがいの方を見て呼んでいる。三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]163より〈著作物の使用について〉三浦綾子・三...
講座・ガイド

【行事報告】2023年4月19日(水)2023年4月期「三浦綾子文学の世界を知る」第1回目が旭川道新文化センター旭川駅前教室にて開催されました。

2023年4月期道新文化センター旭川駅前教室 教養・文学講座「三浦綾子文学の世界を知る」の第1回目が、4月19日(水)14時より開催されました。この講座は、令和5(2023)年度三浦文学案内人養成講座を兼ねており、4月期の講座は今回が第1回...
は・ば・ぱ・ひゃ・びゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(122)“ぶらぶら”

「ふうん」吉川は木の枝にまたがって足をぶらぶらさせながら、そう答えただけだった。喜んでくれるかと思っていた信夫は拍子ぬけした。三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]156、157より〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は、三浦綾子...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(121)“ すらすら”

「吉川、ぼくもお坊さまになろうと思うんだ」この間から言おう言おうと思いながら言いそびれていたことを、信夫は木に登ったとたんにすらすらと言えた。三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]154、155より〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著...
か・が・きゃ・ぎゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(120)“ げらげら”

ふじ子も、どうやらその母をまねているらしかった。「だめねえ。おにいさまも何かごあいさつをしてちょうだい」信夫と吉川はげらげら笑って逃げだした。三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]150、151、152より〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(119)“ そっ”

菊はだまってうなずき、そっと目頭をおさえてうつむいた。その夜、信夫は布団の中にはいってからも、ねむられなかった。母の涙が気になった。自分が母に悪いことをたくさん言ったような気がした。三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]126より〈著作物の使用...
か・が・きゃ・ぎゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(118)“ きちっ”

「でも、おかあさまはおばあさまのことを忘れているから、ごはんを上げないのではないのですよ」菊は信夫の前にきちっと坐った。今まで見たことのないようなきびしい菊の姿だった。三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]107、108より〈著作物の使用につい...
た・だ・ちゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(117)“ どっ”

「一体どうしました?」菊が顔をのぞきこんだ。信夫は顔をそむけて菊のそばをすりぬけ、仏間にかけこんだ。仏壇の前に坐ると、何か自分でもわからぬ悲しみがドッと胸に溢れた。祖母がかわいそうなのか、自分がかわいそうなのか信夫にもわからない。ただ、涙が...
は・ば・ぱ・ひゃ・びゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(116)“ ぽたり”

「信夫さん」菊の呼ぶ声がした。信夫はだまってうつむいた。ふいにポタリと涙がこぼれた。三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]95、96より〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は、三浦綾子記念文学館を運営する「公益財団法人三浦綾子記念...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(115)“ すっ”

ほんとうの母は、祖母の言ったように、自分を生んで二時間で死んでしまったような気がした。信夫は菊と待子を半々に見ていたが、すっと立ちあがると台所にはいった。だが、どこに仏壇の膳があるのかわからない。祖母のトセは、信夫が台所にみだりにはいること...
は・ば・ぱ・ひゃ・びゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(114)“ ふっ”

自分だけが母の子でないような、ひがみすら感じた。(いいよ。ぼくはおばあさまがまもっていてくれるから)信夫はふっとそう思って慰められた。三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]75、76、77より〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は...
は・ば・ぱ・ひゃ・びゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(113)“ ふっ”

(お祈りなんか、なきゃいいのに)食事時が近づくと、信夫はふっとそう思って侘しくなることがあった。そして、きょうはわけても寂しかったのである。三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]68、69より〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(112)“ じっ”

食前には、必ず菊が祈り、父の貞行と待子は指を組んで祈る姿勢になった。その度に信夫は自分だけが除け者にされたようで、三人の祈る姿をじっと見すえるように眺めた。その寂しさは、ともすると食事中も消えないことが多かった。信夫はなかなか祈りに馴れるこ...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(111)“ そっ”

お手玉はふじ子が一番上手だった。いつも相手をしているのか、吉川も案外上手だった。信夫が一番下手だったが、少し上手にやると、ふじ子のつぶらな目が嬉しそうにそっと笑った。三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]53より〈著作物の使用について〉三浦綾子...
は・ば・ぱ・ひゃ・びゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(110)“ ぺこり”

「こんにちは」信夫がこたえて、ぺこりとおじぎをすると、ふじ子は急にはにかんで母の肩にかくれるようにした。三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]47、48より〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は、三浦綾子記念文学館を運営する「公益...
か・が・きゃ・ぎゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(109)“ くるり”

「こんにちは」その母親におくれて、外から元気よくはいってきた吉川の妹のふじ子はくるりと愛らしい目を信夫に向けた。待子と同じ年ごろである。三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]45、46より〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は、三...
ま・みゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(108)“ まじまじ”

「そうなんだ。おかあさんがかわいそうだから、殴ったりけったりしないで下さいって、おとうさんに手紙をかいて死のうかなあと思うことがあるんだよ」「ふうん」信夫はまじまじと吉川の顔を見た。えらいと思った。そして、そんなにまで母のことを思う吉川が少...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(107)“ じっ”

「うん、死にたいと思うことがあるな」吉川が寂しそうに笑った。信夫は吉川をじっとみつめていたが、鉢の万年青に目を外らした。窓の向こうを子供たちが四、五人走って行った。三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]27、28より〈著作物の使用について〉三浦...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(106)“ さっぱり”

「何だって?」一度だって死にたいなどと思ったことはない。信夫は何だか吉川が無気味になってきた。吉川が何を考えているのか、さっぱり見当がつかなかった。信夫はトセが死んだ時、たった今まで生きていた人間が、あまりにも、あっ気なく死ぬのに恐怖を感じ...
か・が・きゃ・ぎゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(105)“ きちん”

「そうだなあ。学校の先生なんかいいな」信夫は根本芳子先生の白い顔を思い出した。学校の先生の方が、寺のお坊さまよりいいような気がした。学校の先生には、生徒たちも、親たちもきちんと立ちどまって礼をする。三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]15、1...
た・だ・ちゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(104)“ つるつる”

「何? お坊さま?」おどろいて信夫は思わず大きな声を出した。「うん、お坊さまだ」「どうして、お坊さまになりたいの? 頭をつるつる坊主にして、長いお経を読むんだろう?」三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]9、10、11、12より〈著作物の使用に...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(103)“ すれすれ”

六月にはいった今日、信夫は吉川の家にはじめて遊びにきていた。家には吉川修だけがいた。吉川の家には信夫の家のような門も庭もない。信夫の屋敷の三分の一もない三間ほどの二戸建ての家である。よしずでかこった出窓に植木鉢が並べられ、窓のすぐそばを人が...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(102)“ ずしり”

(約束だからな)信夫は吉川の言葉を心の中でつぶやいてみた。するとふしぎなことに、「約束」という言葉の持つ、ずしりとした重さが、信夫にもわかったような気がした。三浦綾子 『塩狩峠』[桜の下]198、199より〈著作物の使用について〉三浦綾子・...
か・が・きゃ・ぎゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(101)“ ぎくり”

集合場所である桜の木の下に近づくと、「誰だ」と、ふいに声がかかった。信夫はぎくりとした。三浦綾子 『塩狩峠』[桜の下]188、189、190より〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は、三浦綾子記念文学館を運営する「公益財団法人...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(100)“ しん”

やっと校庭にたどりついたころは、さいわい雨が小降りになっていた。暗い校庭はしんとしずまりかえって、何の音もしない。だれかきているかと耳をすましたが話し声はなかった。ほんとうにどこからか女のすすり泣く声がきこえてくるような、無気味なしずけさだ...
あ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(99)“ おずおず”

貞行の声がきびしかった。「いいえ。雨が降った時はどうするか決めていなかったの」信夫はおずおずと貞行を見た。三浦綾子 『塩狩峠』[桜の下]167、168、169より〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は、三浦綾子記念文学館を運営...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(98)“ じっ”

「今夜、八時に桜の木の下に集まるって」「そう約束したんだね。約束したが、やめるのかね」貞行はじっと信夫をみつめた。三浦綾子 『塩狩峠』[桜の下]158、159、160より〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は、三浦綾子記念文学...
は・ば・ぱ・ひゃ・びゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(97)“ ぼつぼつ”

夕食の時になって、雨がぼつぼつ降りだしていたが、七時をすぎたころには、雨に風をまじえていた。「おかあさま、ぼくこれから学校に行ってもいい?」三浦綾子 『塩狩峠』[桜の下]144、145より〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は...