北海道・十勝の製菓メーカー「柳月(りゅうげつ)」をご存じでしょうか。
NHK連続テレビ小説『なつぞら』の放映時に、登場する菓子店のモデルではないか……と話題になり、「酪農みるくバターケーキ」は、特に注文が殺到したということです。
先月、池田町立図書館で講演があり、その途中にある音更(おとふけ)町にも立ち寄ることができました。音更町の道の駅の隣には、「柳月」の新工場「スイートピア・ガーデン」があり、ひときわ多くのお客さまが集まっていました。
「柳月」といえば、銘菓「三方六(さんぽうろく)」が愛されています。白樺の薪を模したバウムクーヘンで、ユニークなその形と、しっとした味わいが特徴です。
実は以前から、「スイートピア・ガーデン」の2階にゆかりの人々の展示コーナーがあり、三浦綾子コーナーもある、と伝え聞いていました。
実際に階段をのぼると――ありました! 「三浦綾子先生と柳月」と題して、綾子のエッセイが紹介されていたのです。その横には、当文学館の直筆原稿複製額(『氷点』『塩狩峠』)も飾られており、この場を借りて感謝申し上げます。
綾子が1975年に発表したエッセイ「十勝野と帯広」(『ひかりと愛といのち』所収)を、さっそく読み返してみました。十勝川温泉、鮭のルイベ、そして、銘菓「三方六」のことが楽しげに書かれているのが印象的です。
ところで、他の都市のお菓子屋さんに叱られるのを覚悟でいえば、帯広の街ほど平均してお菓子のおいしい街も珍しいのではないか。それは、小豆の名産地だからか、ビートの名産地だからか。とにかくお菓子がおいしい。とくにあの「三方六」は、わが夫三浦(味にかけてはちょっとばかりうるさい男ですぞ)の激賞してやまないお菓子である。
「十勝野と帯広」(『ひかりと愛といのち』所収)
その「三方六」ベンチに座って、記念写真をぱちり。ちなみに、「スイートピア・ガーデン」以外ではなかなか手に入らない「大納言」というきんつばもお気に入りです。
スイーツの秋、読書の秋。どちらも楽しんでいきたいですね。
田中綾