現在開催中の
特別展「加藤多一の世界・“馬”と“川”」も
6月10日(日)までとなりました
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これまで二度にわたって開催された
多一さんの作品の朗読会も最終回です
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今回は朗読とギターの組合せ
ギター奏者は北海道文学館の平原副館長です
平原さんはこれまでに何度も
朗読の伴奏を担当しています
今回は多一さんのたっての希望で
お忙しい中札幌から駆けつけて下さいました
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当初、朗読は他の方を予定していましたが
体調不良とのことで
急きょ多一さんご本人が朗読することになりました
朗読する作品は『馬を洗って・・・』
物語は
「さんぼんじろ」と呼ばれる
足が3本白い馬と
その馬をかわいがる多一さんのお兄さんのお話です
「三本白」の馬は
不吉だと言われ
産まれてすぐ
縁起を担ぐ昔堅気のお父さんに殺されかけますが
お兄さんは仔馬を必死で守り抜きます
それ以来父と息子の間には深い溝が生まれます
その「三本白」の馬は
やがてソンキと名付けられ
お兄さんは、とてもかわいがり一生懸命世話をします
多一さんには
川でソンキの身体を洗っている
やさしいお兄さんの姿が
幸せな思い出として鮮明に記憶されました
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終戦の一年前
体の弱かった
お兄さんもついに招集されます
まもなく戻ってきたお兄さんは
ソンキのそばで死を選びます
軍隊でひどい扱いを受けたことが
直接の原因のようです
でも戦時中であり、そのことはひた隠しにされ
「ソンキに蹴られて死んだ」ということにされてしまい
ソンキはその日のうちに撃ち殺されます
ソンキはなにも悪くなかったのに・・・
事実を知らない多一さんは長い間
「どんなにかわいがっても、動物に気持ちは伝わらないのだ」
そんな思いを抱き続けました
しかし
ずっと後になってお母さんから
事実を打ち明けられ
お兄さんやソンキに対する熱い思いが蘇ります
また
息子の幸せを願うお父さんの気持ちが
ソンキを虐げたのだという事も知りました
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なんて悲しい物語でしょう
加藤多一さんは児童文学作家ですが
作品の放つ強いメッセージ性は
児童文学という世界をはるかに超えています
こうした多一さんの姿勢に綾子さんもきっと共感を覚えたことでしょう
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著者ならではの朗読は
当時に想いを馳せながら
静かに続きます
シーンと静まり返った会場は
朗読が終わるのと同時に大きな拍手に包まれました
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続いて第二部として
北大名誉教授 小野有五さんと多一さんとの対談が行われました
小野さんは多一さんの話が長くなりがちなので
ホイッスルを首からぶら下げて登場し
会場がドッと沸きました
反原発や反戦などの運動で
共通の思いがあるお二人のお話は
とても興味深いものがありました
朗読会終了後、多一さんのサイン会が開かれ
多くのファンが本を手に並びました