オノマトペで楽しむ三浦綾子(106)“ さっぱり”

さ・ざ・しゃ・じゃ行

「何だって?」
一度だって死にたいなどと思ったことはない。
信夫は何だか吉川が無気味になってきた。
吉川が何を考えているのか、さっぱり見当がつかなかった。
信夫はトセが死んだ時、たった今まで生きていた人間が、あまりにも、あっ気なく死ぬのに恐怖を感じた。
今まで生きていた人を、死んでしまったと思うことにも、ふしぎな感じがした。
トセの死は、病気で死んだというより、何ものかにいきなり命を奪われたというような印象を与えた。

三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]2324より


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