さ・ざ・しゃ・じゃ行

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オノマトペで楽しむ三浦綾子(123)“すらり”

菊の呼ぶ声がした。澄んだ声である。いちょうの木の上に登っている信夫と吉川修には、縁側に立っている菊のすらりとした姿が見える。菊は方角ちがいの方を見て呼んでいる。 三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]163より 〈著作物の使用について〉三浦綾子...
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オノマトペで楽しむ三浦綾子(121)“ すらすら”

「吉川、ぼくもお坊さまになろうと思うんだ」この間から言おう言おうと思いながら言いそびれていたことを、信夫は木に登ったとたんにすらすらと言えた。 三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]154、155より 〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世...
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オノマトペで楽しむ三浦綾子(119)“ そっ”

菊はだまってうなずき、そっと目頭をおさえてうつむいた。その夜、信夫は布団の中にはいってからも、ねむられなかった。母の涙が気になった。自分が母に悪いことをたくさん言ったような気がした。 三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]126より 〈著作物の...
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オノマトペで楽しむ三浦綾子(115)“ すっ”

ほんとうの母は、祖母の言ったように、自分を生んで二時間で死んでしまったような気がした。信夫は菊と待子を半々に見ていたが、すっと立ちあがると台所にはいった。だが、どこに仏壇の膳があるのかわからない。祖母のトセは、信夫が台所にみだりにはいること...
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オノマトペで楽しむ三浦綾子(112)“ じっ”

食前には、必ず菊が祈り、父の貞行と待子は指を組んで祈る姿勢になった。その度に信夫は自分だけが除け者にされたようで、三人の祈る姿をじっと見すえるように眺めた。その寂しさは、ともすると食事中も消えないことが多かった。信夫はなかなか祈りに馴れるこ...
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オノマトペで楽しむ三浦綾子(111)“ そっ”

お手玉はふじ子が一番上手だった。いつも相手をしているのか、吉川も案外上手だった。信夫が一番下手だったが、少し上手にやると、ふじ子のつぶらな目が嬉しそうにそっと笑った。 三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]53より 〈著作物の使用について〉三浦...
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オノマトペで楽しむ三浦綾子(107)“ じっ”

「うん、死にたいと思うことがあるな」吉川が寂しそうに笑った。信夫は吉川をじっとみつめていたが、鉢の万年青に目を外らした。窓の向こうを子供たちが四、五人走って行った。 三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]27、28より 〈著作物の使用について〉...
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オノマトペで楽しむ三浦綾子(106)“ さっぱり”

「何だって?」一度だって死にたいなどと思ったことはない。信夫は何だか吉川が無気味になってきた。吉川が何を考えているのか、さっぱり見当がつかなかった。信夫はトセが死んだ時、たった今まで生きていた人間が、あまりにも、あっ気なく死ぬのに恐怖を感じ...
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オノマトペで楽しむ三浦綾子(103)“ すれすれ”

六月にはいった今日、信夫は吉川の家にはじめて遊びにきていた。家には吉川修だけがいた。吉川の家には信夫の家のような門も庭もない。信夫の屋敷の三分の一もない三間ほどの二戸建ての家である。よしずでかこった出窓に植木鉢が並べられ、窓のすぐそばを人が...
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オノマトペで楽しむ三浦綾子(102)“ ずしり”

(約束だからな)信夫は吉川の言葉を心の中でつぶやいてみた。するとふしぎなことに、「約束」という言葉の持つ、ずしりとした重さが、信夫にもわかったような気がした。 三浦綾子 『塩狩峠』[桜の下]198、199より 〈著作物の使用について〉三浦綾...
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オノマトペで楽しむ三浦綾子(100)“ しん”

やっと校庭にたどりついたころは、さいわい雨が小降りになっていた。暗い校庭はしんとしずまりかえって、何の音もしない。だれかきているかと耳をすましたが話し声はなかった。ほんとうにどこからか女のすすり泣く声がきこえてくるような、無気味なしずけさだ...
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オノマトペで楽しむ三浦綾子(98)“ じっ”

「今夜、八時に桜の木の下に集まるって」「そう約束したんだね。約束したが、やめるのかね」貞行はじっと信夫をみつめた。 三浦綾子 『塩狩峠』[桜の下]158、159、160より 〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は、三浦綾子記念...
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オノマトペで楽しむ三浦綾子(96)“ そっ”

「そうかい。じゃ、ほんとうにおばけが出るかどうか、今夜八時にこの木の下に集まることにしないか」松井が言った。みんなおしだまってしまった。そっとどこかに行くふりをして離れた者もいた。 三浦綾子 『塩狩峠』[桜の下]131、132より 〈著作物...
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オノマトペで楽しむ三浦綾子(92)“じっ”

と、そのとき、恵理子は誰かの視線を感じた。ポプラから離れて、ふと対岸を見ると、タンポポの群れ咲く岸に腰をおろしてじっとこちらを見ている青年があった。十メートル離れたこちらからも、その眉は秀でて見えた。白いワイシャツの姿が清潔な印象を与えた。...
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オノマトペで楽しむ三浦綾子(91)“すらり”

イタリヤポプラの下までくると、恵理子はポプラの幹によりかかって、まだ真っ白い大雪山を眺めた。透明な青空の下に、大雪山の雪は新雪のように純白に見えた。街から帰ってくる時々、恵理子はこうして、そのすらりとした肢体をポプラの幹にもたせて、大雪山を...
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オノマトペで楽しむ三浦綾子(88)“はっ”“じっ”

夕食の時、信夫は箸をとろうとして、ハッとした。貞行も菊も待子も、じっと頭をたれている。菊が祈りはじめた。 三浦綾子 『塩狩峠』[桜の下]48より 〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は、三浦綾子記念文学館を運営する「公益財団法...
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オノマトペで楽しむ三浦綾子(83)“さっさ”

しかし信夫は何となく恥ずかしくなって、「うん」と言ったまま、さっさと家の中にかけこんでしまった。 三浦綾子 『塩狩峠』[桜の下]18、19、20より 〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は、三浦綾子記念文学館を運営する「公益財...
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オノマトペで楽しむ三浦綾子(79)“すやすや”

寝室に引きとった貞行も菊も、すやすやと眠る信夫の顔をだまってのぞきこんだ。 三浦綾子 『塩狩峠』[母]145より 〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は、三浦綾子記念文学館を運営する「公益財団法人三浦綾子記念文化財団」が所有・...
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オノマトペで楽しむ三浦綾子(76)“そっ”

要するに、信夫にとっては、ヤソとは許すことのできない悪い者であった。そのヤソに母がなっているときいて信夫はうす気味悪くなった。やさしそうな声をして、何をしでかすかわからないような気がした。おばあさまが、母のことを死んだと言ったのがわかるよう...
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オノマトペで楽しむ三浦綾子(75)“そっ”

「おかあさまが至らなかったからです。おばあさまのせいではありませんよ」母が、信夫の涙をそっと拭ってくれた。 三浦綾子 『塩狩峠』[母]66、67より 〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は、三浦綾子記念文学館を運営する「公益財...
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オノマトペで楽しむ三浦綾子(73)“じっ”“そっくり”

「死んだのではない。よく顔を見てごらん。お前とそっくりではないか」貞行の言葉に、信夫は再びじっと女の人を見た。言われてみれば、たしかに似ている。そして、自分の顔を鏡にうつして、心ひそかに想像していた母よりも、ずっと美しかった。 三浦綾子 『...
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オノマトペで楽しむ三浦綾子(72)“じっ”

「おかあさまだって?」ランプの光に、やや青白く見える女を信夫は、じっと見た。 三浦綾子 『塩狩峠』[母]22、23より 〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は、三浦綾子記念文学館を運営する「公益財団法人三浦綾子記念文化財団」が...
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オノマトペで楽しむ三浦綾子(71)“すらり”

父が夜おそく客をつれてくることはない。梶棒がおろされ、前のほろが外されると、お高祖頭巾の女がすらりと降りたった。月の光を受けて、その女のぬれたような目が美しかった。車が去ると女は信夫の肩をかきいだいた。 三浦綾子 『塩狩峠』[母]7より 〈...
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オノマトペで楽しむ三浦綾子(70)“ずしり”

「……この、親不孝者!」と大声をはりあげた。その瞬間、トセの体がのめるように、ずしりと音をたてて、たたみに倒れた。 三浦綾子 『塩狩峠』[菊人形]173、174より 〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は、三浦綾子記念文学館を...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(67)“そっ”

「え、何ですって。信夫! 一体それはどこでですか」はげしい見幕であった。子供心に信夫は自分でいってならないことをいってしまったことに気がついた。そっと父の顔をうかがうと、貞行は膝を正してうつむいている。 三浦綾子 『塩狩峠』[菊人形]151...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(66)“さっ”

「そう、それからどんな人がいました?」「ええと、よくわからない。あんまりたくさんいるんだもの。あ、そうそう、へんな女の子に会ったけれど……」貞行の顔色がさっと変わったことに、信夫もトセも気づかない。 三浦綾子 『塩狩峠』[菊人形]144、1...
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オノマトペで楽しむ三浦綾子(64)“すーっ”

「ああ、すーっとした。おいしいね、おとうさま」よしず張りの茶屋にはいって、信夫はラ厶ネをはじめて飲んだ。 三浦綾子 『塩狩峠』[菊人形]109、110より 〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は、三浦綾子記念文学館を運営する「...
か・が・きゃ・ぎゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(60)“ぐっ”“しゅー”

(おばあさまはラ厶ネはおなかに悪いといっていたけれど……)しかし、一度でいいから、あの玉をぐっと指で押しこんで、シューと泡の吹きあがるラムネを飲んでみたいと、信夫はいくど思ったことだろう。 三浦綾子 『塩狩峠』[菊人形]52、53より 〈著...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(55)“じっ”

縁側でキセルをくわえながら、貞行はしばらくじっと雲をながめていたが、ふと視線をかたわらの信夫にうつした。信夫は描いたような黒い眉を八の字によせて、何か考えている。 三浦綾子 『塩狩峠』[菊人形]2より 〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦...
あ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(48)“さっ”“うろうろ”

「そうです。ぼく町人の子なんかに屋根から落とされたりするものですか」信夫の言葉に貞行の顔色がさっと変わった。六さんはうろうろとして貞行を見た。 三浦綾子 『塩狩峠』[鏡]158、159より 〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権...