masachika-namba

か・が・きゃ・ぎゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(109)“ くるり”

「こんにちは」その母親におくれて、外から元気よくはいってきた吉川の妹のふじ子はくるりと愛らしい目を信夫に向けた。待子と同じ年ごろである。 三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]45、46より 〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は...
ま・みゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(108)“ まじまじ”

「そうなんだ。おかあさんがかわいそうだから、殴ったりけったりしないで下さいって、おとうさんに手紙をかいて死のうかなあと思うことがあるんだよ」「ふうん」信夫はまじまじと吉川の顔を見た。えらいと思った。そして、そんなにまで母のことを思う吉川が少...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(107)“ じっ”

「うん、死にたいと思うことがあるな」吉川が寂しそうに笑った。信夫は吉川をじっとみつめていたが、鉢の万年青に目を外らした。窓の向こうを子供たちが四、五人走って行った。 三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]27、28より 〈著作物の使用について〉...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(106)“ さっぱり”

「何だって?」一度だって死にたいなどと思ったことはない。信夫は何だか吉川が無気味になってきた。吉川が何を考えているのか、さっぱり見当がつかなかった。信夫はトセが死んだ時、たった今まで生きていた人間が、あまりにも、あっ気なく死ぬのに恐怖を感じ...
か・が・きゃ・ぎゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(105)“ きちん”

「そうだなあ。学校の先生なんかいいな」信夫は根本芳子先生の白い顔を思い出した。学校の先生の方が、寺のお坊さまよりいいような気がした。学校の先生には、生徒たちも、親たちもきちんと立ちどまって礼をする。 三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]15、...
た・だ・ちゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(104)“ つるつる”

「何? お坊さま?」おどろいて信夫は思わず大きな声を出した。「うん、お坊さまだ」「どうして、お坊さまになりたいの? 頭をつるつる坊主にして、長いお経を読むんだろう?」 三浦綾子 『塩狩峠』[かくれんぼ]9、10、11、12より 〈著作物の使...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(103)“ すれすれ”

六月にはいった今日、信夫は吉川の家にはじめて遊びにきていた。家には吉川修だけがいた。吉川の家には信夫の家のような門も庭もない。信夫の屋敷の三分の一もない三間ほどの二戸建ての家である。よしずでかこった出窓に植木鉢が並べられ、窓のすぐそばを人が...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(102)“ ずしり”

(約束だからな)信夫は吉川の言葉を心の中でつぶやいてみた。するとふしぎなことに、「約束」という言葉の持つ、ずしりとした重さが、信夫にもわかったような気がした。 三浦綾子 『塩狩峠』[桜の下]198、199より 〈著作物の使用について〉三浦綾...
か・が・きゃ・ぎゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(101)“ ぎくり”

集合場所である桜の木の下に近づくと、「誰だ」と、ふいに声がかかった。信夫はぎくりとした。 三浦綾子 『塩狩峠』[桜の下]188、189、190より 〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は、三浦綾子記念文学館を運営する「公益財団...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(100)“ しん”

やっと校庭にたどりついたころは、さいわい雨が小降りになっていた。暗い校庭はしんとしずまりかえって、何の音もしない。だれかきているかと耳をすましたが話し声はなかった。ほんとうにどこからか女のすすり泣く声がきこえてくるような、無気味なしずけさだ...
あ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(99)“ おずおず”

貞行の声がきびしかった。「いいえ。雨が降った時はどうするか決めていなかったの」信夫はおずおずと貞行を見た。 三浦綾子 『塩狩峠』[桜の下]167、168、169より 〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は、三浦綾子記念文学館を...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(98)“ じっ”

「今夜、八時に桜の木の下に集まるって」「そう約束したんだね。約束したが、やめるのかね」貞行はじっと信夫をみつめた。 三浦綾子 『塩狩峠』[桜の下]158、159、160より 〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は、三浦綾子記念...
は・ば・ぱ・ひゃ・びゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(97)“ ぼつぼつ”

夕食の時になって、雨がぼつぼつ降りだしていたが、七時をすぎたころには、雨に風をまじえていた。「おかあさま、ぼくこれから学校に行ってもいい?」 三浦綾子 『塩狩峠』[桜の下]144、145より 〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(96)“ そっ”

「そうかい。じゃ、ほんとうにおばけが出るかどうか、今夜八時にこの木の下に集まることにしないか」松井が言った。みんなおしだまってしまった。そっとどこかに行くふりをして離れた者もいた。 三浦綾子 『塩狩峠』[桜の下]131、132より 〈著作物...
は・ば・ぱ・ひゃ・びゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(95)“ ひそひそ”

もう汗ばむぐらい暑いことがあって、校庭の桜が満開だった。四年生になった信夫は級長になった。先生の仕事を手伝い、少しおくれて学校を出ると、一番大きな桜の木の下で、同級生が十人ほどかたまって何かひそひそと話し合っていた。信夫が近づくと、みんなは...
は・ば・ぱ・ひゃ・びゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(94)“ はっ”

カードを手にとった信夫は、一目見てハッとした。それは今まで見たこともない、きれいな色刷りの絵だが、そこにえがかれているものは、むごたらしいものだった。両手両足を釘にうたれ、その脇腹から血を流している十字架の上のやせたキリストがいた。信夫はし...
声つむぎコンテスト

声つむぎコンテストへのご応募を考えておられる方へ 動画アップロードの手順をご案内します

2023年6月25日(日)午前9時からご応募の受付を開始する「第1回声つむぎコンテスト」へのご応募を考えておられる方へのご案内です。 応募方法は、ご自身の朗読を動画で保存して、YouTubeでのリンクにしてメールでお送りいただくという形式に...
は・ば・ぱ・ひゃ・びゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(93)“ぼんやり”

菊と待子が出て行くと、貞行は火鉢に手をかざして本を読みはじめた。信夫は凧でもあげに外に出ようと思ったが、妙に気がのらない。仕方なく本を読んでいる貞行のそばでぼんやりとしていた。 三浦綾子 『塩狩峠』[桜の下]66より 〈著作物の使用について...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(92)“じっ”

と、そのとき、恵理子は誰かの視線を感じた。ポプラから離れて、ふと対岸を見ると、タンポポの群れ咲く岸に腰をおろしてじっとこちらを見ている青年があった。十メートル離れたこちらからも、その眉は秀でて見えた。白いワイシャツの姿が清潔な印象を与えた。...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(91)“すらり”

イタリヤポプラの下までくると、恵理子はポプラの幹によりかかって、まだ真っ白い大雪山を眺めた。透明な青空の下に、大雪山の雪は新雪のように純白に見えた。街から帰ってくる時々、恵理子はこうして、そのすらりとした肢体をポプラの幹にもたせて、大雪山を...
や行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(90)“ゆっくり”

恵理子は土手の端の柔らかいよもぎをちぎって、形のいい鼻に近づける。よもぎの新鮮な、鋭い香りが恵理子は好きだ。恵理子はよもぎを手に持ったまま、ゆっくりと歩いて行く。 三浦綾子 『果て遠き丘』[春の日](一)8より 〈著作物の使用について〉三浦...
は・ば・ぱ・ひゃ・びゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(89)“ひっそり”

が、恵理子の立つ、川一つ隔てたこの道には、いま、車はおろか、人影もない。川に向かって、小ぎれいな住宅の、赤や青の屋根屋根が、途切れ勝ちにひっそりと並んでいるばかりだ。川を境に、静と動の世界がある。それが恵理子の心を惹く。 三浦綾子 『果て遠...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(88)“はっ”“じっ”

夕食の時、信夫は箸をとろうとして、ハッとした。貞行も菊も待子も、じっと頭をたれている。菊が祈りはじめた。 三浦綾子 『塩狩峠』[桜の下]48より 〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は、三浦綾子記念文学館を運営する「公益財団法...
た・だ・ちゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(87)“ぼんやり”“ちらり”

夕方になって父の貞行が帰ってきた。待子は、いつか道で会った時のように、大手をひろげて貞行の腰にまつわりついた。信夫は、おかえりなさいとあいさつすることも忘れて、ぼんやりとそれを眺めていた。貞行が、ちらりとその信夫をみて、肩をたたいた。 三浦...
は・ば・ぱ・ひゃ・びゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(86)“びっくり”

菊にきかれて、信夫はだまって箸をつけた。きらいも好きもない。食べたことがないのだからと、信夫は箸の先にいらだたしいような思いをこめて、卵焼きをつついた。一口ほおばって、信夫はびっくりした。こんなおいしいものが、この世にあったのかとおどろいた...
は・ば・ぱ・ひゃ・びゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(85)“ふっ”

信夫は両手を組んで、祈っている母と待子をだまってみつめていた。祈り終わると、待子が大きな声で、「アーメン」と言った。ふっと、信夫は淋しくなった。自分だけが除け者にされたような気がした。 三浦綾子 『塩狩峠』[桜の下]33、34、35、36よ...
は・ば・ぱ・ひゃ・びゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(84)“びっくり”

「いただきます」と箸をとった時、待子がびっくりしたように言った。「あら、おにいさん。お祈りをしないの」 三浦綾子 『塩狩峠』[桜の下]27、28、29より 〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は、三浦綾子記念文学館を運営する「...
さ・ざ・しゃ・じゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(83)“さっさ”

しかし信夫は何となく恥ずかしくなって、「うん」と言ったまま、さっさと家の中にかけこんでしまった。 三浦綾子 『塩狩峠』[桜の下]18、19、20より 〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は、三浦綾子記念文学館を運営する「公益財...
は・ば・ぱ・ひゃ・びゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(82)“ふっくら”

「おにいさん。待子、知らなかったの。ねえ、待子、あねさま人形を持っているの。遊びましょうよ」と信夫の手をひっぱった。そのふっくらとした小さな手の感触が、妙にくすぐったくこころよかった。 三浦綾子 『塩狩峠』[桜の下]17、18より 〈著作物...
は・ば・ぱ・ひゃ・びゃ行

オノマトペで楽しむ三浦綾子(81)“ぺこん”

「あら、信夫さん。おかえりなさい」菊が玄関から姿をあらわした。信夫は何となくあかくなって、ぺこんとおじぎをした。 三浦綾子 『塩狩峠』[桜の下]11、12より 〈著作物の使用について〉三浦綾子・三浦光世の著作権は、三浦綾子記念文学館を運営す...